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出会いと別れの旅 día33 〜サンティアゴ巡礼の記録〜

こんにちは


ただいま16時35分サンティアゴ・デ・コンポステーラ空港。

今日で巡礼が終わった。
朝はできれば清々しい気持ちで目が覚めて欲しかった。
今朝は今までで一番良くない目の覚め方。
昨日、後悔ないようにバルにはしごしていっぱい飲んだせい。
寝る前に靴下を5本指に履き替えるという巡礼中についた習慣は、最後の最後までやっていたのが少し嬉しかった。

朝起きた時にはスペインでは非常事態宣言が発令されていた。
その影響か、サンティアゴ・デ・コンポステーラは巡礼中通りすぎる村と同じくらいゴーストタウンとなっていた。
バルもカフェテリアもレストランも全部休業。
朝はカフェテリアに行ってcafe con lecheを飲むというルーティーンは最後の最後にできなかった。

巡礼路を通ってサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂に行く。
私たちの目的は、サンジャンピエドポーからフランス人の道を通ってサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂に行くことだった。
それが31日間の旅を経てやっと達成された。
本来ならば12時からミサがあった。
巡礼事務所に行って巡礼証明書を受け取るはずだった。
大聖堂の近くの5つ星ホテルのピルグリムメニューを食べようと思っていた。
でも全部叶わなかった。
大聖堂を目の前にしても、入れないのであればレオンの大聖堂と同じ。
皮肉なことに今日はすごく天気が良かった。

終わりはかなり味気ないものになった。
でも今回私と連れが行ったのは、旅行ではなく旅である。
旅行は点で旅は線だと連れが私に教えてくれた。
私たちはただサンティアゴ・デ・コンポステーラに行って終わりではない。
そこに至るまでの過程が一番大切で、最後のミサも巡礼証明書もピルグリムメニューも全部おまけに過ぎない。
私たちには一番大切な31日間があるのだから。



この31日間は出会いと別れの旅。
写真を見ればつい昨日のことのように思い出す。
もしかしたら旅って出会いと別れが前提にあるのかもしれないが、この巡礼旅はそれを肌で感じさせてくれた。

訪れる街は一期一会。
朝出発した時は今日の目的地でも、到着すれば明日の出発地。
明日になり歩き終わると今日の出発地はもう思い出の街。
目的地に着くのが街との出会いで、出発するのが街との別れ。
私たちは行った街にはもう戻らない。
これは街に関しても人に関しても同じ。

アルベルゲのオーナーは十人十色。
めちゃくちゃ愛想の悪い鼻ピアスのおばさんもいれば、めちゃくちゃ愛想のいいフランクなおじさんもいる。
ネコがいるアルベルゲと庭があるアルベルゲはだいたい当たりで、設備も人もよかった。
一番思い出に残っているのはやっぱりドイツ人老夫婦。
たくさん優しくしてもらい愛を感じ、別れが寂しくなったのは巡礼中あの日だけ。
「ホスピタリティ」という言葉はこういうことかと身に染みて分かった。

出会いと別れは巡礼路にもある。
巡礼を始める前は、「冬の巡礼ではアルベルゲに5人以上人がいたら多い方」と言われていたけど、5人以上いる日がほとんどだった。
最初は話しかけづらかった人もたくさんいるけど、話してみるとすぐに打ち解けられた。
仲良くなって一緒に歩いても、ペースが一緒ではないし、泊まる街、アルベルゲもずっと一緒ではない。
だから前半、中盤、終盤で出会う人、仲良くなる人は全然違った。
せっかく仲良くなったのに別れてしまうのはとても寂しく、もっと一緒にビールを飲めばよかったなぁと後悔したものだ。



サンティアゴ巡礼は人生の縮図。
私は中学受験に失敗し、中学、高校ともに剣道と勉強の文武両道を目標にしていたけど、とくに部活の方は満足した結果は残せなかった。
今回の巡礼に関しても、私は最初にフィステーラまで歩くという目標があった。
この目標はコロナのせいではなく、自分の弱い心のせいで達成できなかったと思っている。
でも、別にいい。
中学受験に失敗したこと結果的によかったし、いい仲間に巡り合えた。
剣道で結果が残せなかったのは悔しかったけど、剣道に重きを置いた文武両道であれば、今ごろ広島大学には在籍していなかったかもしれない。
大学受験で本来の第一志望を受験できなかったことに関しても、特に不満はないし楽しく生活できている。
サンティアゴ巡礼は立てた目標の少し下までしか達成できない私の人生を表していた。
フィステーラまで歩けなかったことは、全然悪いことだとは思っていない。
「出た結果が一番いい」のだから、これが最善に決まってる。
これだけの距離を歩いたということは、中途半端な人生で人に誇れることなのではないか。



日本にいる時から色んなアドバイスをしてくれて、最後まで一緒に巡礼してくれた連れ。
本当にありがとう。
感謝しても仕切れない。
一生の経験ができました。



「人生変えたる!」と思って巡礼したけど、この31日間で私の人生は変わっただろうか。
人として成長できただろうか。
授業、バイト、サークル、勉強、人付き合い、色んなしがらみから時放たれてひたすら歩き続けるという経験は今後もうないだろう。
約1ヶ月間を海外で過ごすという経験は人生初で、日本に帰って自分にどんな変化が起こるか非常に楽しみでありんす。
日本に帰ったら気持ちを新たに、主体的に頑張っていきたいと思う。


今日の歩数11952歩。
サンティアゴ巡礼の記録 完